ものは考えよう
「手相の勉強をしているのですが、よろしければ少しお時間をいただけないでしょうか」夏休みも始まったばかりの7月下旬、それは東京駅での出来事だった。
『何事も経験が大事』そんな安易な考えから手を差し出した私は、30分後にはスッカリ良い気分になってしまい彼の崇める大先生の元に行く寸前にまでなっていた。マルチに引っ掛かったのである。東京ではそういったものが盛んだとは聞いていたが、まさか自分が引っ掛かるとは思いもしなかった。幸いその時は偶然かかってきた知人からの電話のおかげでマルチと気づき難を逃れたが、もしあの電話がなかったらと思うとぞっとする。
この話を東京出身の知人にしてみたら笑って一蹴されてしまった。彼女は登下校時に通る新宿駅で毎日のように話し掛けられているそうだ。マルチやネズミ講は、自分だけは引っ掛からないと思っている人ほどよく引っ掛かると聞くが、まさにそれを体現した形になった。情報メディアの発達により、もはやそれらは根絶されたかに思えたが調べてみるとどうもそうではないらしい。驚いたことに一般企業でもマルチ商法やそれに準ずるMLMなどを企業戦略として展開しているところもあるようだ。
しかし、本当に注目すべきはその巧みな話術だろう。赤の他人をわずか2,3分で魅了してしまうというのはマルチ商法やネズミ講等の全てにおいて驚くべき技術である。こう書くと私が何かマルチを推奨しているかのように思われるかもしれないがそうではない。
これらの技術自体に善悪はなく、使い方次第では役立つ能力にもなりえるのではないかということだ。例えば学生ならば友人作りに役立つし、社会人になったときに営業などで有用なのは容易に想像がつく。『馬鹿と鋏は使いよう』とはよく言ったもので、今回の巧みな話術も使い方一つで全く別の受け捕らえ方をされるのではないか。それが言いたかった。
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