中央大学教員名鑑−佐藤清教授(経済学部)−
第3回目となる、今回は社会政策・労働問題を専門として扱っている佐藤清(さとう きよし)経済学部教授にお話を伺った。
――社会政策・労働問題を専門として大学教員になった理由は
「私は現在フランスの女性労働問題について研究しているのですが、そのきっかけとなったのは高校生の時に夢中になったフランス文学でした。当時の私はフランスにとても興味があったので大学に入学した際も第二外国語は無条件にフランス語を選択し、その後も様々な場面でフランス語に触れ続けました。こうして振り返ってみるとフランスに関連した研究の道を進むことになったのは当然といえば当然かもしれません。そして、フランスというと女性の労働条件や地位は他国よりも恵まれている、というイメージが一般的には強いのですが、客観的データからは決してそうとは言えません。それは仕事をこなし順調に昇進していても、ある日突然見えない壁――『ガラスの天井』に突き当たるということからもはっきりしています。そこで、今から数十年前になりますがそれらについてのゼミを開き現在に至ります」
――大学教員になって学んだことは
「教員になって学んだことは、授業を行うにあたり学生に対しては真摯に、そして誠実に向き合うことが大切だということです。大学教員というと往々にして自分は一国一城の主だという錯覚に陥ってしまうことがありますが、しかしそれは教員にとっても学生にとっても何ら良い影響は与えません。なぜならそれは自分の横暴さには鈍感になり学生の態度には無関心になってしまうということだからです。『ノブレス・オブリージュ』という言葉がありますが、それなりの地位にはそれなりの義務が伴うということです。それは大学教員にも当てはまるものだと私は思います。大学教員という恵まれた立場にあるからこそ自己鍛錬を怠ってはいけないのだということを学びました」
――ゼミ活動の姿勢について
「毎年、経済学部ではゼミナール大会というゼミ単位での発表会があるのですが私はそれをとても大切にしています。というのも、それらを通して学生や私自身も学べることが数多くあるからです。ゼミナール大会では順位がつけられるので学生がそれを気にするのは仕方のないことだと思いますが、私は順位よりもゼミを通して全員が結束して一つのことをやり遂げるというプロセスを大事にして欲しいと常に学生に言っています。私はゼミというものを優れた学生を育てる場として非常に大切にしているので『僕は君たちを息子、娘として扱います。したがってゼミの中では沢山悪態もつきますが、それは君たちを優れた学生として育てようと思っているからです』、『君たちは指導教授の僕には誠実であらねばなりません』と、2点必ず言います。こう言うのは、幼稚園児から大学院生までに通じることとして私は教育とは『愛』だと考えているからです。これはつまり、学生を信頼し、真剣に接するということです。私の受け持っていたゼミ生は希望の就職先から内定を貰ったり、社会に出てから優れた役職に就いたり、といったことがあるとしきりにゼミのおかげだ、と言ってくれます。こういう報告を聞くたびに私は心から例えようもないほどの幸せな気持ちになります。したがって、教壇に立ち人にものを教える立場として、この教育は愛であるという確信が自分の中から消えたとき、それは教師を辞める時だと思っています」
――学生にメッセージを
「人は誰でも己の帰属する社会の発展を願うものでありその社会が小さければ小さい程、その意識も強くなるものだと思います。私の願いは私自身が本学出身であり40年近くを本学で過ごしてきたことに加え、あと2年半で定年を迎えるということも大きく関係していると思いますが、学生諸君には大学への帰属意識や母校愛というものを持って欲しいということです。帰属意識や母校愛と言っても学生の現段階ではまだ把握しづらいかと思います。それは指導教授がどれだけ気持ちを込めて学生に接するか決まってくるのだと思います。だからこそゼミは特にそうですが、本学への感謝の念とその恩返しの気持ちを込めて優れた学生を育てようと私は心から期しているのです。もう一つ強く思うことは読書を通じて知性と教養を身につけた豊かな学生になってほしいということです。現代はさまざまな優れた映像や画像で溢れていますが、知性や教養はそれらでは得られないことを忘れないことです。知性や教養は活字を通して自己の内面で時間をかけて醗酵していくものなのです。大学生という『緑なす青春』のこの時期にこそ読んでおくべき本が沢山あるのだということを学生諸君には忘れないでほしいです。大学時代を間違いなく送ったというアイデンティティはそれらの経験を元に形成されるのですから」
【主な経歴】
・中央大学経済学部卒(1964)
・中央大学大学院経済学研究科修士課程修了(1966)
・中央大学大学院経済学研究科経済学専攻博士課程単位取得退学(1969)
・中央大学経済学部教授 (1984−)
【現在の専門分野】
社会政策・労働問題
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